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「おぉっす、こんなところで一人さびしく晩酌かい?」 陽気な声を上げて魅魔は庭で酒を舐めている幽香に手を上げた。その手には妙に大きな、人が入ってそうな麻袋を引きずっていて。 普段から比べてもやけに陽気な魅魔に幽香はちらりと視線をやり、すぐにうっとおしそうな溜め息をついて視線を外す。 「おんや、愛想悪いねぇ。いつものことだけどちょいと傷つくよ」 言葉とは裏腹に全く気にした様子もなく柵に腰をおろして笑う魅魔に幽香は舌打ちを一つ打つと並みの人間、妖怪ならそれだけで逃げ帰りそうな表情で睨みつけた。 「おお怖い怖い。あんまり怖いからー、酒呑みたくなってくるね、こー、かっぱかっぱと空けたい」 「失せなさいよ。あんたに構うほど暇じゃ」 「いや暇でしょどうみても暇持て余してる」 飄々と笑いながら幽香の怒りを受け流す魅魔をしばらく睨みつけていたが、やがて諦めたのか舌打ちをしてカップを口につけて僅かに傾ける。 あからさまに機嫌の悪い幽香を見て魅魔は肩をすくめて。 「相変わらず怒りっぽいねー、余裕が無いって言うか。そんなんだから」 そんなんだから、何だというのだろうか。他人から悪く思われる? 誤解される? 友達がいない? だったらどうした、他人からどう思われようが知ったことか、むしろ周りが静かでいいぐらい。 「シン・アスカから嫌われたーって頭抱えるんだよ」 「こぷっ!?」 むせる。というか思いっきり気管に酒が入ってしまってまともに喋れない。 涙目になりながらもなんとか言葉を出そうとするが。 「あんっ、た、なにを、ごほっごほっ、なに、なにぃっく、なに」 「あーあーあーあー、ほらちょっと落ち着きなよ、何言ってるかさっぱりだよ」 背中を優しくさすられながら呆れた声をかけられてしまう。口元を押さえてこんこんとせき込むことしばし。 ようやく落ち着くと魅魔を睨みつける。もっとも、涙目で迫力は半減どころか十分の一以下だったが。 「ん、別の破壊力はあるね?」 「何の話よっ、それより、何でそこでシン・アスカが、あの糞黒黒が出てくるのよ?」 「いや何でって。あんたがあれのこと好いてるのは見てれば分かるさ、気付いてないのは当人ぐらいじゃないかな?」 涙目のまま鼻を鳴らす。まったくこの幽霊はなにをトンチキなことを言っているのか。自分がシンに好意を抱いていることが周囲にバレバレだなんてそんなことはないはずだ。 だってチルノにはまったく気付かれていなかったし。 「根拠になると本気で思ってんのかい?」 「思ってるわよ! だって私と違ってチルノ可愛いし!」 何の根拠にもならんよ。心中でそう呟き魅魔は溜め息をついた。頬を膨らませて睨んでくる幽香の髪を見てまた溜め息。 「あによ」 「髪切ったのも、長い髪は可愛くなかったからかい?」 何も言わずにただ鼻を鳴らしてそっぽを向かれる。そんな幽香を見て分かりやすいなあと心中で苦笑してしまう。 「……私は」 そっぽを向いたまま、蚊が泣くような小さな呟き声。何も言わずにただ黙ることで続きを促す。下手に聞き返したりしたらまたそっぽを向いて、完全にだんまりだろう。 それなりに付き合いも長いのだ、なんとなくだが彼女のパターンは読めている。 「私は、あんたの弟子みたいに可愛くないのよ」 やっぱり。思わずくすりと笑いが出てしまう。 「……正直、髪長いの、似合ってたと思うんだけどな」 「可愛く、ないのよっ。背が高いのも、変に痩せてるのも、目つきが悪いのも、すぐ手が出るのも、空回りばっかりなのも、こうやって愚痴ばかり言ってるのもっ。ぜんぶ、かわいくないのよ」 「そういうとこは可愛いよ」 からかわれていると思ったのだろう、さらりと言ってのけた魅魔を涙目のまま思いっきり睨みつける。 「どこっ、がよ! そういうとこってどこよ、どこなのよ!?」 「だからそういうとこ。ま、落ち着いたらゆっくり考えてみるんだね」 ふよふよと浮かびながら立ち去ろうとする魅魔。しかし引きずっていた麻袋は置いたままで。 「ちょっと。荷物、持って帰んなさいよ。私の家はゴミ捨て場じゃないわ」 「ああ、いやいや。プレゼントだよ、あげる」 「はぁ? あんた何言って」 「んじゃまあ今度こそお暇しようかねー、ごゆっくり♪」 止める間もなく立ち去られてしまった、どうしてああも急いで逃げるように立ち去るのか、と言うかゆっくりとは。 胡散臭そうに魅魔の背中と麻袋を交互に見るが答えは出ない。溜め息を一つついて麻袋の中を覗き見る。 実のところさっきから気にはなっていたのだ、一体何が入っているのか――― 「…………」 黒い髪に白い肌、全身黒ずくめの服装。 麻袋を閉める。しばし眉間を押さえて顔を上げる。 「そっか、私疲れてるのね。この中にあの黒黒が入ってるとか、そんなハハハ」 現実逃避じゃない断じてこれは現実逃避じゃないと現実逃避しながらもう一度麻袋の中を見て。 黒髪白肌黒ずくめ。シン・アスカが意識を失って放りこまれていた。 「搾乳するわよあンのクソ亡霊ーー!」 「はっ!?」 幽香の声に反応してシンが目を覚ます。やはり相当大声で叫んだからだろうか。 搾乳という言葉に反応したわけではないはずだ、多分恐らくきっと。 目が合い、思わず後ろに下がって距離をとってしまう幽香。そんな幽香に戸惑った視線を向けることしばし。 「………おはよう、ございます?」 「………もう夜よ」 「魅魔さんからお茶を勧められたんですけど……何か盛られたのかな」 「ふ、ん。呑気なものね、私の前にいるって言うのに」 剣呑に目を細める幽香に構うことなく、どこいったかなーと呟きながら麻袋の中を探るシン。 そんなシンの姿が幽香の気に食うはずもなく、苛々とした様子で腕を組み二の腕を指で叩きだした。 「ちょっと、お前人の話を聞いているの? 何よこっち向きなさいよ蹴るわよ踏むわよ叩くわよ」 「っと、あったあった。はい、幽香さんこれ」 「もぐわよ、って、何よコレ」 唐突に突きだされた紙袋に面食らった顔を浮かべる幽香。 そんな彼女にシンは苦笑しながらも、どうぞとばかりに幽香の手に紙袋を握らせる。 「バレンタイン、チョコありがとうございました。これお礼です、よかったら」 「……チョコ、ねぇ」 二月十四日、チルノに渡してくれと頼んだチョコの末路を思い出す。 大ちゃんだけじゃ飽き足りないのか黒黒なんか嫌いだバーカバーカと連呼しながらシンの顔面に叩きつけられ砕けて散ったチョコ。 ちょっとだけ泣きそうになる自分に何度も何度も頭を下げて謝るチルノと何も言わず、黙って地面に落ちたチョコを食べておいしかったですとだけ言ってくれたシン。 そしてどこからともなく湧いて出たフリーダムことキラ・ヤマト! その気配を察知して空の彼方から突進するアスラン・ザラ! 全力で逃げるキラ、とてもイイ笑顔で追うアスラン、そして何かをあきらめたかのように遠くを見続けるシン・アスカ! 突如爆散するアスラン、空に浮かぶイイ笑顔、僕らの戦いはこれからだと言いたげなキラのドヤ顔、どうでもよさそうに花を眺めるシン! そしてキラの足首を掴む地面から生えたアスラン・ザラ! イ リ ュ ー ジ ョ ン ! そんな、ちょっと切ない記憶。変態どもなど見てないったら見てない。ただの気のせいだと心に強く念じる。 「あんなのをあげたなんて思えるお前は相変わらず面白い頭をしてるのね」 「まあそりゃそうですけどね。でもまあ、確かに貰ったわけですし? だったらお返ししなくちゃでしょうよ」 ふん、と鼻を鳴らす。貰ったから返す、それならば他からも貰っていた以上自分以外にもお返しを渡しているわけで。 つまり。自分が特別なわけじゃ、ない。 (………あ、れ。あれ?) 鼻の奥がツンとする。喉がカラカラに乾いて目頭が熱く、足はかくかくと震えて手の指を何度も意味もなく閉じたり開いたりを繰り返し。 やがて頬を熱いものがつたい。シンの顔が強張っていく、一体どうしたというのだろうか。 自分は泣いてなんていないのに。 「っ、幽香さん」 「うるさいっ、見るな!」 そっぽを向いてシンのこれ以上の追及から逃れようとするが、腕を掴まれる。 妖怪からすれば力なんて強くもない、無理やり振りほどけるはずなのにどうしてかそれが出来ない。 「なに、よ」 「……その、幽香さん泣いて、るから、だから」 「~っ、ハッ、私が泣いてるように見えるだなんて、お前は目がおかしいのかしら、ああそれともおかしいのは頭かしら?」 嗜虐的な笑みを浮かべながらも頬に涙の痕が残り、目が真っ赤に充血している幽香の言葉に、シンは唇をまっすぐに引き絞る。 「泣いてますよ」 「っ」 「ホントのことを言えば、泣いてる理由は分からないです。どうすれば涙を止めてやれるのかも分からない。それでも、それでも。せめて涙を拭うぐらいはしたいんですよ」 そう言うと、親指で幽香の目じりの涙を優しく拭う。 しばらくはシンにされるがままだった幽香だが、やがてぽつりと呟く。 「お前が嫌いで泣いてるとは思わないの?」 「ん? うーん、まあチョコくれるぐらいだから嫌われては無いと思ったんですけど………あの、もしかして俺のこと嫌いでした?」 情けない顔で幽香の表情をうかがう。自分やアスラン・ザラと戦った時の勇ましさとはまるで違う表情に幽香は抱きつきたい衝動に駆られるが、ぐっと我慢する。 嫌いなわけないでしょう心底好きよ。そう言ってやりたいけれど、言ったところで拒絶されるだけだということも幽香には分かっている。 「……別に。嫌ってるわけじゃないわ………でも」 (貴方は私のことが嫌いなんでしょうけど) 言葉を切った幽香の心境を知ってか知らずか、シンは幽香の言葉を待つ。 邪気のないその姿に幽香は溜め息を一つついて。 「でも、もういいわ」 「何がです?」 「嫌ってるわけではないけど、私に優しくするのは金輪際止めて頂戴」 きっと、これ以上優しくされると耐えられない。抱きしめてもらいたくなる、優しく頭をなでもらいたく、甘やかしてもらいたくなってしまう。 優しさに、溺れたくなる。そんなの自分じゃない、そんな夢見る少女のような思いなんて自分には到底似合わない。 何よりもそんな存在がシン・アスカの側にいていいはずがない、ましてやそれが自分自身だなんてこと、あってはならないはずだから。 幽香の言葉にシンは一瞬俯き、そして顔を上げて真っ直ぐに幽香を見る。 「それは、できません」 感情のこもらない瞳で見返す幽香に、シンは困ったような顔を浮かべるが、それでも決してひるむことなく。 「妖怪さんはどうかは知らないですけど、人間って他人に優しくするように出来てるんですよ。だから優しくしないなんてこと出来ないんです、それが涙を流してる人ならなおさら」 「………嘘、よ。そんなの」 「少なくとも俺の知ってる人達はみんなそうでしたよ。俺の家族、俺の恩人、俺の友達、俺の仲間、俺の初恋、みんな優しい人たちでしたよ。色んなもんを無くして、敵だったはずの俺に手を差し伸べてくれた人だっていました」 「それは……それは、お前がそれしか知らないというだけよ」 「かもしんないですね、人間自分が知ってることしか知らないのかもしんないです。それでも俺は俺が見てきた優しい人たちの方を信じたいですよ、人間ってのは元々あったかくて優しく出来てるんだって」 それが当たり前であるかのように他人に優しくする。それは人としては正常なことであり。コズミック・イラでは異常なことであり。どうしようもないのはシンなのか世界なのか。 「………っ、嘘よ、そんなの嘘っぱちよ。私のどこが優しくするに値するってのよ私にそんな価値があるとでも思っているの、お前馬鹿じゃないの馬鹿じゃないの馬鹿じゃないの馬っ鹿じゃない、の……?」 強く、抱き締められる。 ……顔を見られなくてよかったと他人事のように思う。こんなぐしゃぐしゃになった瞳を見られたくなんてない。 「……ごめんなさい。正直に言えば価値があるかどうかは分からないです。でも………でも、だけど。嫌いじゃない人に辛い思いなんてしてほしくはないです、だから優しくするんだと、思い、ます」 「っ、何、よ、何よぅ。そんなんだから、お前がそんなんだから、貴方がそんなんだから、そうやって優しくする、か、ら―――!」 どうしようもなく、好きになるんじゃない。 言葉にすることはできず、ただ嗚咽しかできない。 「うう………うー、うぅぅううぅ、ふぅうううう――――」 何も言わずにただ抱きしめたまま頭をなで続けるシンの胸に顔をうずめ、駄々っ子のように背中をバシバシと叩きながら、幽香はひたすらに子供のように泣きじゃくり続けた――― 「―――まあったく。ホントに素直じゃないねぇ幽香は」 ひょいと肩をすくめながらシンの服にこっそりと張り付けた符から聞こえてくる音を聞き続ける魅魔、その隣にはキラが座っている。 「盗聴って……いやあ、素敵な趣味ですね?」 ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながら揶揄するようなキラの言葉にもう一度肩をすくめる。 「ま、そう言いなさんな。魔理沙にゃ悪いとは思うけど、ああでもしなけりゃ幽香があんまりだしね」 「それはまた……薄情な師匠さんですね?」 「それなりに付き合いも長いのさ、ちょっとぐらいは、な? ……に、しても」 「うん?」 「人間は他人に優しくするように出来てる、か。ああまで真っ直ぐならそりゃ魔理沙も惚れるわけだね、あんたはどう思う?」 何気ない言葉で言うなり、キラの方を見て。顔を強張らせて視線を逸らす。 ニヤニヤとした笑みではなく、直視するにはあまりにも。あまりにもおぞましすぎる笑顔を浮かべていて。 「ま さ か で し ょ う ?」 「………悪かったよ。その顔を止めとくれ、見ただけで死にそうだ」 「………シンほど、夢を見るつもりはないですよ。現実ってのは概ね優しくないですから」 つまらなさそうな表情、そしてその中に混じっている感情は。 「あんたは………羨ましいのかい?」 「んー、何がでしょうか?」 再びニヤニヤとした笑みを浮かべ出す。その表情からは言外に話は終わりだと告げていて。 「……それじゃ、帰るとしますかね。あんたはどうするんだい?」 「どうしましょうかねー。恋する少女達に嫌がらせでもしようかなとは思ってますけどね?」 「そいつはまた……素敵な趣味だね」 そう言い残し、魅魔はこの、どことも知れない何もない場所から音もなく消え去っていった。 後に残ったのは静寂とキラのみ。やがて鼻を鳴らして歩き出す。 「………羨ましいわけないじゃない、僕は君と違ってなんだって簡単に出来るんだから。君と違って何だって出来るんだから、努力なんていらないんだから。だから………羨ましいわけが、ないんだ」 そう、ぽつりと羨ましそうな顔で呟いて消えて。 今度こそ、誰もいなくなった―――― おまけ 「そこをどいてくれ、キラ、早苗! あの太陽の畑でシンが緑色の悪魔に誑かされているんだ、それが何故わからない!?」 「いやなんでそんなこと分かるの………まさかアスラン、盗聴とかしてない?」 「馬鹿野郎、そんなことするわけないじゃないか、そんなことしなくても気配で分かるに決まってるだろう!?」 「盗聴のほうがまだマシですよ!?」 「くそっ、シン………待っていてくれ、今俺が助けに行くからな!」 「いやー求められてないんじゃないかなあ」 「キラ、どうしてお前はそうやって俺を止めようと………あ、もしかして。お前がシンを助けたくて、つまり俺に嫉妬してるのか? お前の心はシンの物だって、そうだっていうのか!?」 「ええっ、やっぱりそうだったんですkあぶなァァーーいッレールガンが!?」 「そうってなぁにそうってなぁにそうってなあに腐れ緑? ● ● 」 「あ、あのごめんなさい、私が悪かったのでその目を止めて下さい?」 「だけど、忘れないでくれキラ。俺の心は、お前だけの物なんだってことを」 「クスィフィアス、バラエーナ、ルプス、ドラグーン! 全弾叩きこんでやるぅああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 「やめろ、キラ! 危ないじゃないか!?」 「なんでぜんぶ避けられるんですかこの人!?」 「チクショウ! もっとKOOLにならなきゃ当てられない!」 「それはダメなフラグですよ!?」 「落ち着くんだ、キラ。だけど……一生懸命なお前は、好意に値するよ」 「――――え゛?」 「好きってことさ(cv.石田彰)」 「斬艦刀持ってこい、この変態を叩き切ってやるんだ!!」 「落ち着いて、落ち着いて下さい! まだ幻想入りしてませんよう!?」 「放せ、放してくれ! HA☆NA☆SE!」 おまけ2 「…………………………なんか今、ツッコまなきゃいけなかったような」 「知らないわよ(サクサクサクサクサク」 「う、うーん……ところで、おいしいですかクッキー?」 「もっとがっつり甘い方がいいわ、まあおいしいけど」 「女の人にやるものだから甘くしすぎるのもどうかと思って……おいしいならなによりです」 「ええ、まあそうね…………」 「はい」 「……………シ、シン・アスカ」 「はい」 「………………………あ、あーん」 「あ、ありがとうございます(パクッ」 「………っ、………~っ………!」 「どうかしました幽香さん、顔赤いですよ?」 「…………………ベツニ」 「は、はぁ?」 「……………………おかしいでしょなんで貴方が平然としてるのよここは貴方が顔赤らめるとこでしょなんで私がこんなに赤くならなきゃならないのよおかしいでしょおかしいでしょおかしいでしょ」 「どうかしました、ブツブツ呟いて」 「別に。お前が馬鹿だって言っただけよ。この―――ばぁか」 「??????」
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目次 1.一念三千論について 2.人間はすべて十階建てのビルの住人 3.関係の論理と実践の論理 4.摩訶止観とは 5.一念三千は関係の論理、実践の論理は勉学、努力 6.地上への転生は進化の早道 7.光の天使の活動エネルギーは霊太陽 8.地獄霊の活動エネルギーは地上界から出る悪想念 9.フワン・シン・フワイ・シンフォーとは私のこと 8.地獄霊の活動エネルギーは地上界から出る悪想念 善川 その場合に、地下の地獄霊が活動するエネルギーというのは、何処から彼らは抽出しているのでしょうか。 天台 先程も言いましたように、生命力自体というものは、既に与えられており、これは決して不増ということであります。まずこれが一点であります。――第二点でありますけれども、これも既にあなた方、ご承知であると思いますけれども、゛想念゛であります。゛想念エネルギー゛であります。これを吸収しております。 善川 そのエネルギーによって、彼らは地球上の地域如何を問わず、自分達の欲する場所へ現われるのでしょうか。 天台 その活動力は若干意味が違うのであります。それは世界観の違いであります。 善川 彼らがこの地上界に悪影響をおよぼしておりますが、これらはその悪想念を食してエネルギー源としているのでありましょうか。 天台 まあ、そういうことであります。 善川 たとえば、いろんな神社信仰とか、仏閣信仰とかによって大勢の人間がこの世的な、主として物欲的な念願を込め祈願をしていますが、そのほかギャンブル、詐欺、誑(たぶら)かしなどが醸(かも)し出す悪想念、これを悪霊といわれろ未進化の霊、あなたの申される迷える霊たちはこの人間の物欲的悪想念を、自己の活動のエネルギー源として吸収して、日々自我中心の欲望生活を続けているのでありましょうか。 天台 この地上界、一階に住んでいる人間の念いというものは、既に現実実相の世界にもあるものであります。この世界で明るい太陽を念う心は実相の世界にもあるものであります。 悪を念う心、恨み、つらみ、妬み、怒り、このような心もまたある世界であります。その世界のエネルギーになるのは、そのマイナスの考えといいますか、想念といいますか、磁場と申しますか、こういう怒りなら怒り、恨みなら恨みという想念も一つのエネルギーなのです。このようなものが彼らの活動源になっているのです。その意味においてそのようなものを無くしていかねばならないのであります。 9.フワン・シン・フワイ・シンフォーとは私のこと 善川 もし、お教え願えるならば、先般私どものこのような会にお出になられた、天台宗系の僧と名乗られた「フワン・シン・フワイ・シンフォー」という方は、実在人物でしょうか? 天台 フワン・シン・フワイ・シンフォーとは、そのような名前を使って出てきているのでありますが、実際にはその人ではありません。 善川 何んというお方でしょうか? 天台 天台智顗であります。 善川 ――ああ、あなた様でありましたか。 天台 私であります。当初、高橋信次さんのところに現われたときに、私は、フワン・シン・フワイ・シンフォーという名前を名乗って現われたのであります。天台智顗、と名乗って現われてもびっくりしますから信用しません。だからそういう名を使って現われたのであります。天台智顗、私であります。 富山 ただ、そうしますと、高橋先生の本では、フワン・シン・フワイ・シンフォーという方は、イエス様の分身で、天台智顗様はお釈迦様の分身だと書いてあるんですが? 天台 かなり混乱はあるでしょう。 善川 先般私どものところにもお出で下さって「天国と地獄論」をお説き下さったフワン・シン・フワイ・シンフォーという方も、あなた様であったのですか、……それともあなた様の分身の方であられたのですか――。 天台 私であります。 富山 私、思うに、高橋先生のその仏教のとらえ方、或はキリスト教のとらえ方については、ひじょうにその、天台的、日蓮糸的な色彩が強いんじゃないかと思うんですが、それはその指導霊の方の個性に基因することが多いのでしょうか。 天台 あります。 善川 高橋先生は、いまはもうご他界されているわけですが、現在そちらではどの階に上っておられますか。 天台 私たちの上の階におられます。 善川 やはりまた主の座についておられるのでしょうか。 天台 何んとも申せません。 富山 一つだけお伺いしたいのですが、地上に出ているものに「実相」の世界すべてが明かされるのでしょうか。 天台 どういうことでしょうか、すべてとは、如何なることでしょうか。 富山 つまり「実相、神理」の全体像が……。 天台 そのために、われわれがこうやって協力しているのです。 富山 ただ私が思いますのに、私たちがそれぞれ出て来た目的というか、それには時代背景というものがあると思うのです。その状況に限定されたことしか教えてもらえないのではないかという気がするのですが。 天台 というか、あなた方の理解を超えたことについては、私たちには語ることはできないのです。 富山 その理解というのは、時代背景にひじょうに制約されているのでは……。 天台 時代背景だけではないのです。一階に居て、十階を語ることはひじょうにむつかしいことであります。行ったことのない、頭の中に浮べることのむつかしいことを、一生懸命に説いているわけです。いまも十階建ての建物の話をしました。エレベーターの話をしました。これはみな比喩であります。こういう比喩を使わなければわれわれの世界、われらの考えを述べることができないからです。比喩であります。十階建ての建物、エレベーターの話も、この三次元世界にあるものをもって来て、われわれは語っているのであります。実際には、こうではないのであります。しかしあなた方の感覚に訴えかけて、理解できる方法でしか語ることができないのです。限界があります。 富山 つまり、釈迦、イエス、その他の聖賢が説かれた真理というのは、一階から十階すべてを眺めた真理ですね。 天台 そうです。 富山 一階から眺めた真理ですね……。 天台 一階からではないんです。われわれも協力しておりましたから、八階、九階のいろんな住人が来て協力しておったのですが、それを理解できるような比喩でしか語れなかったということであります。 富山 つまり一階に翻訳した形での゛神理゛ですね。 天台 そうです。一階の人間に分るように語っただけです。――われわれが、たとえば八階に住んでいる人間が、七階の人間に語るようには語っていないのです。一階に住む人間に対して語っているのです。 善川 そのことは分りましたが、今後わたしたちは、それぞれの立場で、正法、神理を述べ伝えねばならぬということですが、そこで問題なのは、各自の現在の社会生活とのかかわり合いですが、現在の社会生活、即ち職業を持ちながら、一方において法を伝え広めるという作業は、ひじょうに困難であると思うのですが、或は一切の社会生活を放擲して、この伝道の道に専心すべきでしょうか……。 天台 ゛神゛にお任せなさい。あなた方個人の力だと思っているから困難に見えるのです。神が道を拓いて下さるのであります。個人の力でどうこうなるからと思っているからこそ、そのような悩みとなるのです。神の命であります。神の指命であります。道は開けてくるのであります。困難な現象が起きるならそれも神のみ旨であります。起きないなら神のみ旨であります。如何なることが起ろうと、あなた方は、あなた方の使命を果たさなければならないのです。この世的に、楽な繁栄、幸せになるようなことは、この際忘れ去りなさい。何故なら、あなた方は「実相」の世界の住人だからであります。あなた方が還ってくるところは、もう明らかになっているのであります。残り数十年、この一階の世界をどのようにしていくかということであります。あなた方はみんな還ってくるのです。遅かれ、早かれ還ってくるのです。われらの世界に帰ってくるのです。困難はないのであります。何も心配はないのであります。 善川 天台様、それではまことに長時間、どうもありがとうございました――。 富山 天台様、もしそちらに「不空三蔵」様がおいでになられましたら、ちょっとあなたとお替わり願えますでしょうか。 天台 わかりました――。
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1 「うあ、なんだこれ」 霧雨魔理沙はアリスの家の前にあるそれを見て呟いた。 地面から生えている真っ黒い生首。パッと見はそれである。というかそれ以外の何物でもない。 そしてその生首はブツブツと何かを呟いている。 耳を澄まして聴いて、 「そうか女の敵か」 ものすごく後悔した。その生首は、やれ、おっぱいサイコー、だの、 きょぬーって夢と浪漫と何かがつまってるよねー、だの、貧乳は滅べばいいのにー、だの、 おっぱいおっぱい、だの、ゆかりん可愛いよゆかりん、だの、その少女臭がたまらないよ、だの。 制裁を加えるべきだな。そう魔理沙は思う。この女の敵に女代表として制裁を加えなければならない。 そう、これは自らが女として生まれた以上は必然! 言わばありとあらゆる女達に代わり下す怒りの鉄鎚! 男のエゴをむき出しにしているこの生首への当然の結末! ついでに少女臭などと明らかな欺瞞をまき散らす生首への修正! ………別に、貧乳に個人的に反応したわけでは断じてない。 断 じ て な い 。 「とー!」 とりあえずげしげしと蹴る。正体も分からないし。なんとなく汚い気もするし。 げしげしげしげしげしげしげし「あふん♪」 ―――アリスの家に駆け込んだ。戦略的撤退だ、キモさに負けての敗北ではない。 「うあーん、シンー、アリスー!」 泣きそうな声出してる辺り負けてる気もするが気のせい気のせい。 「ノックぐらいしろよ……で、どうしたんだ魔理沙?」 あきれた声と表情でシンは馴れた応対をする。別段彼女がここにノックも無しで入ることなど珍しくもなんともないからだ。 ……まあ、流石に窓を「ちょいと失礼するぜ!」などとのたまいながらブチ破って入ってきたときは飲んでいたお茶を盛大に吹いたが。 だが、それでも泣きつかれながら入られるのは初めてだ。自然シンも心配そうな顔つきに変わる。 「お、おい、どうした? 何があった!?」 「お、おも、おも、おもおももおおもおも」 よほどキモかったのだろう、全く要領を得ない。もはや半泣きだ。 「落ち着け! 何か起こっても俺が守るから! だから落ち着いて何があったのか話せ!」 落ち着かせるために抱きしめて叫んだ言葉は、 「あうあうあうあうあうあ! あうあう!」 事態をさらに悪化させる! それでこそシン・アスカ! そこに痺れねェ憧れねェ!! ………その後、魔理沙を落ち着かせるため更に力をこめて抱きしめたシンに羞恥心のリミットが外れた魔理沙が ちょっとしたマスタースパークを打ち込んで事態は終息を見せた、やあめでたくなしめでたくなし。 おしまい。 「……いや待て、何一つ始まってない! 結局何があったって言うんだよ?」 幻想郷に来て以来、数多の女難に鍛え上げられたシンにとってパニック状態で放たれたマスタースパークなど、 直撃したところで服がちょっぴり焦げる程度でしかない。 「いや、その、家の前のさ、表、玄関の近くで」 いまだに顔が赤い魔理沙はぽつぽつと話し出す。そこまでで何のことか察したのだろう、シンは納得したように頷く。 ………そこには気づけて、なぜ魔理沙の顔が赤いのかについてはこれっぽっちも察してないのだろうかこの男は。 「ああ、あれか。あまり気にするなよ、関わらなきゃ害はないから」 その言葉に魔理沙は何とも言えない顔をする。納得はしかねるのだろうが、確かに害はなかった。ただひたすらキモかっただけで。 「……まあ、いいけどさ。結局何なんだあれ?」 「んー? キラさん。………元」 いい笑顔を向けるシンに、それ以上の追及はできなかった。 ―――まあ、「あんたのせいでまたやりあう羽目になったんだよ」、「状況悪くするだけ悪くして一人でさっさと消えやがって」、 「パルマ一発で済んでありがたいと思いやがれ」と疲れ切った眼のシンの呟きでなんとなく何が起こったかは把握したが。 「大体あの人は前っから……っと、悪い。愚痴になったな」 「あー、いや、別にいいんだけど、さ」 そういい魔理沙は気忙しそうにきょろきょろと視線を動かす。シンはその態度にだれか探しているのだろうとまた馬鹿な勘違いをする。 「ああ、アリスならいないぞ。今は人間の里で人形劇やってる」 「あ、や、そうじゃなくて、だな。その」 アリスではない、ならば消去法で。 「上海か? それとも蓬莱? 悪いけどどっちも外に遊びに行ってる」 「いやマジボケかそれ?」 まあシンだしな。 「じゃあ……あ。ダメだぞ、色々世話にはなってるけど魔導書は盗ませない! そんなことされたら俺がアリスに殺される」 「いや、そうじゃなしに! えーと、だな。その……たまたま立ち寄っただけ、じゃなくて、その………あの」 魔理沙は帽子と前髪をもじもじと弄くる。そんな魔理沙を見てシンは、 (魔導書でもない? とすると……紅茶か? いや、魔理沙はホットミルク派。考えにくいな…… まさかトイレ? いや、にしては切羽詰まってないな……むぅ?) さらにトチ狂った勘違いを重ねていた。もう少し、あれ、もしかしてひょっとするんじゃね?的に自惚れてもいいようなものだが。 ま あ シ ン だ し な 。 「だからぁ、その………お」 「お?」 そのまま固まる。顔は相変わらず赤いままだ。お、お、と繰り返し、そして。 「お前に、会いに来たんだよ!!」 窓をビリビリと揺らしそうな大声にシンはパチパチと眼を何度か瞬かせ、「そうか」と頷く。 「なら上がれよ、なんか出すから。ホットミルクでよかったか?」 顔もまだ赤い。息は肩でしている。真意は伝えられていない。 それでもちゃんと言うべきことを言えた魔理沙は「・・・うん」と答える。 「―――へえ、本気の幽香とやりあったのか、そりゃまたすごいな」 シンが運んできたホットミルク(蜂蜜たっぷりの極甘仕様)をすすりながら魔理沙はなんでもない話を続ける。 好きな人とはそれだけでも楽しいものだ。 「すごいって言ってもな……引き分けだぞ?」 「いやいや、十分すごいもんだぜ? 私だって本気の幽香なんてスペカ戦じゃなきゃごめんこうむるよ」 賞賛の言葉に慣れていないのだろう、シンは困惑の表情で緑茶―――アリスの見てる前では飲めない。 和風はアリスには不評だ―――をすする。 「むぅ・・・そうはいってもなー。デスティニーに変身してだからなぁ、生身でもちゃんと戦えるお前とは比べられないだろ?」 「自分をそうやって卑下するのはよくないぜ? お前の判断力があるからデスティニーは強いんだよ」 「そういうもんかねー」 「キラだって言ってたぞ、自分がデスティニーになっても性能引き出せないであっさりやられるだろうねーって」 「キラさんが?」 その言葉にシンは意外な表情を浮かべる。 「うん。あ、でもその後、まあ僕の超反応をもってすればシンなんて僕の足元にも及ばないけどねHAHAHA☆って言ってた」 その言葉にシンは玄関の方を睨みつける。 「まあまあ、照れ隠しだよ。耳赤かったし」 「分かってても腹立つんだよ! まったく……」 くすくすと魔理沙は笑う。シンも悪い気はしないのだろう、その顔は穏やかだ。 「………なんか、いいなー」 「ん、何が?」 魔理沙の言葉にシンは首をかしげる。 「いや、こういう、なんつーのかな。なんかいいじゃんか、何にもしないでだべってる時間ってさ」 「んー、ああ。そうかも」 「弾幕ごっことか、魔法の研究も楽しいんだけどさ。なんか、さ」 んー、と魔理沙は背伸びをして、ぐてりとテーブルに上半身を預ける。 「あー、これじゃ霊夢の事を笑えんなー。んあー」 仕方ないなぁとシンは微笑む。実際、魔理沙がぐてりとしてなければ自分がそうしていただろう。 ……微笑んだまま、魔理沙の頭を撫でる。ん?と魔理沙がシンを上目づかいに見つめる。 「ああ、悪い。つい、な」 「んー、いいけど別に。んぅ・・・むー」 くしゃり、くしゃりとゆっくりと撫でる。そのたびに魔理沙はむずがるような嬉しそうな声を上げる。 (うあー、いかん。なんか頭とけそーだ。なんかこー、にーにー言いそー) にへら、と顔がゆるむ。好きな人にこんなことをされればこうもなろうというものだ。 くしゃり。うあー。 くしゃり。んにー。 くしゃり。にあー。 くしゃり。うへー。 ―――ふと、頭を撫でられてだらしない顔をしている白黒の金髪と目があった。 (うわー、なんだあれだらしねー。男に頭撫でられて顔ゆるめ、す、ぎ……ん?) ようやく溶けた脳みそが動き始める。……目があったのは、鏡の中の自分だ。つまり、今の状況は。 「…………う、あ」 かああ、と顔が火照っていく。鏡で見なくたってわかる、顔が真赤だ。 「あの、かえ、る。もう、帰る、から」 「え? いや別にもう少しゆっくりしていっても」 「帰るからっ!!」 そのまま立ち上がり帽子を引っ掴んで玄関に駆け出した。 「お、おいちょっと!?」 訳が分からずにシンも立ち上がる。魔理沙は入り口でくるり、とシンに向き合い、 「お前は、もっと乙女心を分かった方がいい! バーカ!!」 べー、と舌を出してそのまま箒に乗って魔理沙は空に消えていった。 「…………????」 首をかしげるシンは実にボンクラっぽかった。やれやれだぜー、と生首が言ったのでとりあえず蹴っておいた。 おまけ1、香霖堂にて。 「――――ってなことがあったんだが、どう思うよ香霖?」 「え、僕も君が何で怒ったのかよくわからないんだけど?」 「うわ、お前もかよ! あれだなー、お前もシンも八雲紫にでも乙女心を学んだほうがいいぞ?」 「ひどい言いようだなぁ…というか」 「ん?」 「八雲紫は乙女心なんて年じゃ、あれ、なんだこの浮いてる青い棒はって魔理沙?どこ行くんだい、ってちょ、あ」 イケメン惨劇中… おまけ2、アリスの家にて。 「どうかしました、キラさん? キモい笑顔を浮かべて」 「ん?いやなに、ゆかりんからの愛の指令、イケメン死すべしが電波に乗って僕の頭にゆんゆんと届いてきたのSA☆」 「はいはいそうですかーっと。手元が狂ってスコップがあんたの頭にスコッといきそうだからちょっと黙れ」 「そう言いつつ僕をちゃんと掘り出そうとしてくれるシン萌え」 「土食わすから今すぐ口を開けろ!!」 2 魔理沙「シン、ちょっと目をつぶって欲しいんだぜ?」 シン「? ん、まあいいけどね……なんだってお前声震えてるんだ」 魔理沙「い、いいからとっとと目を食いしばれー!」 シン「無茶な。閉じるだけでいいか?」 魔理沙(よ、よーし、後は顔近付けてちょっと唇にちゅっとするだけだぜ。……ちゅっ、と。ちゅっ。……う、うあ。い、いや、やるんだ!) シン「……」 魔理沙(ふ、ふふん。やってみればなんてことないぜ、あともうちょっとでちゅっと……え、えーと。は、肌白いなぁコイツ、まつ毛も長いし) シン「(パチッ)おい、まだか…って、うお、顔近いなオイ!?」 魔理沙「――――う、え、あ」 シン「ん、どうした? 顔赤いけど」 魔理沙「………マ」 シン「マ? あれ、なんか急にヤな予感g」 魔理沙「マスタースパーク!!」 ズキューーーーンッ! アリス「や、やったッ!(心底うれしい)」 霊夢「さすが魔理沙、私たちに(ry(心底楽しい)」 魔理沙「や、やってもーた……!」 シン「何すんだよ、びっくりするだろ!?」 アリス「むしろびっくりで済ますあんたにびっくりよ」 魔理沙「ご、ごめんだぜ。いや、でも、その………ええと。本当はただ、ちゅっ、てするだけで……あー、うん。やっぱいいや、ごめんなさいだぜ」 シン「まあいいけどさ、よくわからんけど………あ。ふと思ったんだけどこの行動は誰に聞いたんだ? 怒んないから正直に」 魔理沙「誰って、そりゃあ……k」 シン「なあんだ、キラさんかぁ。そっかー、あははー。――――――よし、殺そう」 魔理沙「って、ちょ、どこ行くんだよシン……って、行っちゃった」 ぅあんたってひぃとぉはぁぁぁ!!!! フフフフ、ハッハッハッハ、アーハッハッハッハ!! 何手骨体、どうやら僕はあの子の生娘っぷりを甘く見ていたみたいだよ! キラさんめ、死ねぇっ!! 君の方こそ全☆滅だっ!! 霊夢「……ドワオ」 アリス「でもよかった、魔理沙がアンチクショウにズキューーーーンなことしてなくて」 魔理沙「全然よくないぜ……私は駄目な奴だよ!」 霊夢「まったくよね、このへっぽこ。ところでアリス、もしズキューーーーンなことしてたらどうするつもりだったの?」 アリス「そりゃもちろん―――奴を地獄に叩っ込んで私が魔理沙を幸せにするに決まってるでしょ」 霊夢「そういうことを真顔で言えるあんたは本当にキモ……なんでもないわ」 魔理沙「でもさー、アリスはいいよな。シンと一緒に住んでるんだからさー。仲が良くて羨ましいよ、ホント」 霊夢(さてアリスの心境は………あ、ダメだこれ、真っ白になってる) 魔理沙「当面は、お前がライバルだな。ま、負けないんだからな!?」 霊夢「魔理沙、それぐらいにしなさい。そろそろアリス泣くから」 アリス「何言ってるのよ霊夢、泣いたりなんかしないわ。むしろ、恋のライバル出現に燃えてる魔理沙を見れただけでも私、幸せ……ハァハァハァハァ」 霊夢「そう、相変わらず筋金入りのHENTAIね………なんで私、コレと友達やってられるんだろう?」 アスカブリーガー! 死ねぇっ!! ふ、ふふふ、たとえ僕を倒しても、人の心にフリーダムがある限り第二第三の僕と続き、最後の勝利を売るまで戦うだろウボァー 前へ 一覧へ
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みなシン氏作品 17-116 17-586 18-654 19-69 19-801 21-250 ページ最上部へ メニューへ
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崩れ落ちる巨体からは轟々と炎が立ち昇る。 巨体をマンションに預け、燃え立つ姿はまるで大火に見舞われた山を思い起こさせる。 シンの唇に焼け落ちていく巨神の脂肪が貼り付いていく。 それを拭うには、余りにもシンの身体は酷使されていた。 鼻を突く刺激臭が、巨神の焼けていく臭いだとすぐにわかった。 不快でしかないはずのそれが、しかし今だけは心地良く思えた。 (ようやく……守れたんだ……) 何を、とは問わなかった。 ただ漠然とした、けれども確たる達成感が身体中に満ち満ちていく。 緩みそうになる頬を押さえながら、何となく照れ臭いようなむず痒さを覚えて、顔を下に向けた。 座りこんでいたエリオと不意に目が合う。 互いに言葉は交わさない。 けれども、エリオの顔にも似たような照れ臭さ、誇らしさが滲んでいた。 煤に汚れ、汗が張り付いた顔は、昨日よりもどこか大人びて見えた。 自分も同じような顔をしているのだろうか。 尋ねてみたくなった。 脳裏に浮かぶのは今はもう遠い過去のように思える親友の顔。 「やったね、シン!!」 「隊長…」 隠し切れない疲労を滲ませながら、それでも喜色満面の表情でフェイトが駆け寄ってきた。 その顔を見て、くすりとシンは小さく笑う。 何故シンが笑ったのかわからずに首を傾げる仕草は、彼女を年よりも幼く見せた。 本当に自分より三つも年上なのだろうか。 何だか可笑しく思いながら、シンはそっとフェイトの鼻の頭を指でなぞる。 フェイトの鼻の頭に付いた煤を指の腹で拭うと、悪戯が成功したように笑う。 その仕草、その表情にフェイトの顔が林檎のように染まる。 シンは気付いていなかったが、シンの浮かべた笑みは今までの彼のものとは異なっていた。 子供っぽさの残るやんちゃな少年少年した顔ではなく。 一つの事を成し遂げた、夢をその手に掴んだが故に勝ち得た、強さと気高さを孕んだ『男』の笑みであった。 (あ……) その表情に、シンから放たれる雄の空気に、フェイトは急激に鼓動が高鳴るのを覚えながら、ようやくある事に気付いた。 「背、伸びたんだね」 自分の頭の上に手を当てて、そのまま横にスライドさせる。 フェイトの手は丁度シンの頬に触れて止まる。 「初めて会ったときは私の方が高かったのに」 「そういえばそうですね」 男の子なんだなぁ、とフェイトが感慨深く思っていると、フェイトの手をシンが掴んだ。 「ふぇッ!?」 突然の行動にフェイトがうろたえる。 普段シンにそれ以上のスキンシップを迫っているくせに。 そう、心の中で何度も自身に言い聞かせながらも、主と袂を分かったかのように、鼓動は高鳴る一方だ。 シンはそんなフェイトの事など知らぬとばかりに、まじまじと細い羽のようなしなやかな彼女の手を見つめる。 次第に、シンの眉間に皺が寄る。 「怪我してるじゃないですか隊長」 「え?」 「ほら、ここ」 「あ……そうだね、そういえばそうだった」 「直してもらってきて下さいよ?」 「う、うん」 子供を叱る様に、嗜めるように言い聞かせるシンの言うままにフェイトは頷く。 これではいつもと立場が逆だ。 たった一つの戦いで。 たった一つのきっかけで。 随分と大人になったようにフェイトは感じた。 これが男の子の成長なのかと、どこか嬉しく思うと同時に、寂しくも思えた。 「フェイトさん!!大変です!!」 「キャロ?どうしたの」 慌しく走ってきたキャロの帽子を直してやりながら、フェイトは落ち着かせる。 キャロは短く呼吸を整えると、縋るようにフェイトを見上げる。 「まだ、避難が済んでいないんです!!!」 指さしたのは巨神がもたれかかるマンション。 炎が揺らめき、蛇の舌のように近隣の建物を舐め回している。 炎を勢いは衰える事を知らず、真昼の如くシン達の立っている場所までを煌々と照らし出す。 ぎりッ、歯が軋む程に強くシンは歯を噛み締めた。 「俺が行きます」 「そんな、キケンだよ!!」 「中にいる人はもっと危険でしょ」 「それは……だったら私が行く!!」 フェイトの手がぎゅっとシンの袖を掴んだ。 「魔力が空なのにですか?」 「それは…シンだって一緒でしょ!!!」 あの巨神を倒すのに、なのは、はやて、そしてフェイトのトップ3は、その持てる力の全てを使った。 文字通り全てを。 否、死力を尽くさなかった六課の者は誰一人としていない。 シンも当然例外ではなく。 「同じガス欠なら、男の俺が行くべきでしょ?」 シンの言葉にフェイトが押し黙る。 正論であった。 魔力というアドバンテージがなければ一人の少女でしかないフェイトと、屈強な元軍人のシンとを比べたならば、どちらが適任かは明白である。 けれども、フェイトの手は引きとめるようにシンの袖を放さない 。 幼子が親を行かせまいとするように。 必死というよりも、健気なその行為に、シンはフッと険しく引き結んでいた唇を緩めた。 そっとフェイトの頭を撫でると、シンは一つ頷く。 「大丈夫。守ってみせます。誰であろうと」 「シンッ!!!」 そう言いきると、踵を返し、炎に向かって行くシンの背に、悲鳴にも似た声を上げる事しか、フェイトには出来なかった。 ◇ 少女は震えていた。 とうとう来たのだ。 とうとう来たのだ、と小さく呟くと一層震えが増した。 しかし、恐怖はなかった。 視線をぐるりと移す。 テーブルに突っ伏した一人の女。 少女の母であった。 手には包丁が固く握られていた。 左手からはおびただしい血。 既に固まり、どす黒く成り果てた血を汚らわしげに見つめる。 愚かな母だと思う。 少女の家はある宗教に入っていた。 母がではない。 母も父も、祖父も祖母も。 敬虔な宗教家であった。 そのような家に生まれた少女もまた例に漏れず、その宗教を信仰していた。 母親と同じように。 いや、それ以上に。 教典には今日という日が刻まれていた。 『悪魔が跋扈し、狂宴が始まる』 何とも陳腐なものだ。 しかし、少女は、そして少女の家族はそれを陳腐だとは思わなかった。 教典は絶対であったからだ。 そして、教祖はこう言った。 『悪魔に殺されれば魂が穢れる。その前に聖水で清めた刃で自らの命を絶つのだ』と。 母はそれを忠実に実行した。 何故なら母は信仰心に篤い人であったからだ。 愚かな母だと、少女はもう一度思った。 穢れた魂になるのを嫌って命を絶つ。 それはなんて…… 「なんて利己的なの…」 自らの魂の清らかさばかりを思うあまり、肝心の事に気が行っていない。 舞い降りた悪魔を野放しにしておいても良いのか。 いいはずが無い。 主の手を煩わせてよい筈が無い。 本当に主への愛があれば、愛があれば自らを犠牲にしてでも悪魔を一匹でも多く殺すべきではないのか。 「そうよ………そうに決まってる………」 少女は信仰心に篤かった。 母親以上に篤かった。 しかし、少女の未熟な精神は、『自己犠牲』という大儀に酔いしれ、歪んでいた。 少女は恐怖で震えてはいなかった。 ただ、ただ、自己陶酔のあまり、興奮に打ち震えていた。 少女は窓の外をみる。 外は夕焼けのように赤く染まっている。 そう一面の赤。 何と禍々しいのか。 悪魔の赤。 その時、少女の住むマンションの一室がけたたましく開けられた。 「大丈夫か!!!」 少女の瞳に紅が飛び込んだ。 ◇ 「大丈夫か!!!」 一室一室マンションに飛び込んでは人の有無を確認した。 声を外から掛けているだけではわからない。 恐怖に声すら上げられない人間を何人も見てきた。 恐怖に足がすくんで動けない人間をごまんと知っている。 故に、一室一室、部屋を抉じ開けては確認をしていた。 倒れたタンスに足を挟まれている者がいれば手を貸した。 恐怖で動けない者がいれば叱咤した。 ティアナとスバルが駆けつけてくれたのは僥倖であった。 飛び込んだ先には、まだ幼女と言っても差し支えない少女が一人。 小刻みに震える不安げなその姿に今亡き妹が、出会った頃のヴィヴィオが重なった。 「もう大丈夫だから……君は俺が守る」 シンはだからこそ、気付かなかった。 気にもしなかった。 少女の震える手に握られているものに。 激しい炎と、それ故に刻み付けられた濃い影の隠すものに。 「さぁ、いこう……」 そういって、少女の肩に触れた時、初めて少女の瞳とぶつかった。 その瞳の色に、シンは心当たりがあった。 それは ――――――――― 「あ……くま……」 見開かれた黒目がちの瞳、掠れた声。 冷たい感触。 「え……」 冷たい感触がするりとシンの『中』に入り込んでいた。 ゆっくりと、やけにゆっくりとシンは顔を下ろす。 其処には装飾華美な銀色のナイフが根元までシンの腹に入り込んでいた。 刺さっているというよりも埋まるというように。 埋まるといよりも隙間を通すように。 冷たいと思ったのはほんの一瞬であった。 熱い。 急激な熱さ、そして脱力感がシンの全身に広がった。 痛いとは余り思わなかった。 それが少し意外で、何故か滑稽だった。 シンはもう一度顔を上げると、其処には熱病が一気に引いたように、真っ青な顔をした少女の怯えた顔があった。 「わ…わたし…わた…」 カタカタと震える手を見下ろそうとするのを、シンは自分の手を少女の手に被せることで止める。 少女の肩が大きくビクリと震える。 シンは何故だかその少女が愛しくなった。 愛しいというのは些か違うのかもしれない。 放っておけない。 そう思った。 どうしてなのだろうか。 少女は怯えた瞳をシンに向ける。 「あ、ああ、あの、あたし…」 「大丈夫、全然平気だよ?」 少女の黒い髪を撫でる。 叩かれると思っていたのか、一瞬強張る少女が可愛らしかった。 苦笑が漏れる。 「ゴメンな?」 「え?」 「お兄ちゃんの目怖かったか?」 少女は暫しの逡巡の後、おずおずと頷く。 素直でよろしいと、シンは大人ぶって言う。 頭には、嘗てのなのはの姿があった。 彼女達も、或いはこんな思いで自分を見ていたのだろうか。 「大丈夫だよ。怖くない。君を怖がらせたりなんかしない」 「ほんとう?」 少女の震える手をぎゅうっと握り締め、シンは頷く。 一つ、小さく息をする。 腹部に広がる熱が、下半身を覆い、痺れを齎し始めている。 (BJくらい展開出来る余裕くらい残しておけばよかったな) 「いいかい、今からこの棟を出て真っ直ぐに走るんだ。階段に向かって真っ直ぐに」 「まっすぐ……」 「そこにお兄ちゃんの友達がいる。大丈夫、君をいじめたりしないから。その人に付いて行くんだ。そうすれば全部オッケーだから」 こくん 少女は小さく、けれども確かに頷く。 シンはホッとすると、少女の手を引いて立ち上がらせる。 立ち上がらせた瞬間、シンの身体に少女の小さな重みが掛かる。 本当に小さな、些細な重みだ。 しかし、それだけでシンは倒れそうになる。 それを歯を食いしばって耐えると、少女の背中をぽんと叩く。 二、三踏鞴を踏むと、びっくりしたように少女はシンを見上げる。 (もう一ふんばりだ) 「さ、先に行きな」 「うん…」 赤い服を着ていて良かった。 心の底からそう思う。 少女の背が遠ざかるのを見つめながらシンは深く息を吐いた。 「あの!!」 壁にもたれたシンに少女の声がかかる。 「ごめんなさい!!」 涙を浮かべながら言う少女に、シンはニイッと唇を吊り上げて笑ってみせる。 不敵な笑み、力強い笑み。 それを心に牢記しながら。 少女は安心したように、微かに唇を緩める。 初めて見せる少女の笑み。 「ありがとう、お兄ちゃん!!!」 そう言って、今度ははっきりとした笑みを作る。 瞳を閉じて、満面の笑み。 閉じた拍子に両の目の端から涙が零れ落ちた。 それでも少女は笑っていた。 走り出し、部屋から出て行く少女を見つめながら、ようやくシンは座り込んだ。 救われた。 シンは何故かそう思った。 冷たくなり、感覚の無い手を懐に入れると、シンは携帯に手を伸ばす。 一つ一つ渾身の力を込めるように、ボタンを押すと、暫しのベルの後で、喧騒が飛び込んだ。 『シン!!』 「ああ、ティアか……」 『こっちの避難は全部終わったわよ』 「ああ、こっちは最後の一人を送り出したところ。階段に向かってるからさ、頼むな」 『わかったわ』 「ああ……頼むよ」 『シン?』 電話口のティアナの声に不審な色が浮かぶ。 シンは自らを奮い立たせると、努めて軽い声を出す。 「何だよしおらしい。ティアナ様らしくないんじゃないのか?」 『ば、馬鹿!!何よしおらしいって』 「ははは……それでこそティアだ」 『………あんたこそらしくないわよ?無理矢理テンション上げてない?』 鋭い。 シンは内心驚く。 「実はさ、ちょっと怪我して凹んでる」 『何よ。情けないわね~~~怪我してるんじゃないわよ。折角ヴィヴィオがパーティーの準備してるのに』 「パーティー?」 『今日でアンタがこっち来て二年でしょ?』 二年。 もうそんなに経つのか。 あっという間の歳月の流れにシンは急激に感傷を抱く。 『ヴィヴィオったら張り切ってるんだから。シンパパをお祝いするんだって』 「そりゃあ楽しみだ」 本当に。 心底シンはそう思った。 『わかったら…さっさと帰ってきなさいよね』 ティアナの声はこの上なく優しかった。 シンは鼻の奥がツンとした。それは感激だけではなかった。 ようやく気付いた自分の感情。その激しい衝動に涙があふれた。 「わかったって。ああ、それとティア」 『ん?』 これが最後の最後の力だ。 歯を食いしばってシンは顔を上げた。 「俺さ、かなりお前の事好きかも」 『はぁッ!!!ば、ば、馬鹿言ってるんじゃないわよ!!!』 「それだけ。じゃあまたな」 『ちょ、シン!!』 自身の血でぬるぬるとしていた携帯はいつしか乾き、固まり、ごわごわとした感触になっていた。 しかし、シンの手は既にそれを感じるまでもなく、ころんと携帯を落とした。 シンはゆるりとうつぶせに崩れ落ちる。 さっきの少女の目。 マユに似ているとも思った。 それは確かだ。 しかしそれ以上に。 あの瞳の色に、シンは心当たりがあった。 それは ――――――――― 「俺の目じゃん……」 マユを失った自分。 ステラを失った自分。 レイを失った自分。 全てを失った自分。 ただ全てが憎かった自分。 全てが敵に見えた自分。 恐怖と怒り、混ざり合い濁り歪んだ自分。 いつの間に忘れていたのだろうか。 あれは嘗ての自分。 あの世界にいた頃の自分。 「そっか………救いたかったんだ………」 誰をではない。 あの頃の自分をではない。 あの日、あの時、全てを失ったあの日。 妹の手を握り締め、打ちひしがれ、泣き伏していた無力な自分。 あの光景丸ごとを救いたかったのだ。 「じゃあ、やったのか……」 シンの瞼の裏に浮かび上がったのはあの日の光景ではなかった。 なのは はやて フェイト それだけではない。 六課の仲間達の顔。 エリオ キャロ シグナム ヴィータ シャマル ヴァイス かけがえの無い友人。仲間。家族。 スバル ヴィヴィオ そしてティアナ。 全てがこの世界に来てシンが手に入れたもの。 世界から失せたはずの『色』は、いつしか戻っていた。 嘗てのように。 それ以上の鮮やかさで。 「帰らなきゃ……」 シンは両の腕に力を込めた。 ずるずる。 血が張り付き、腹が擦れる度に気が遠退きかける。 それでもシンは力を込める。 どれほど進まなくても。 それでもシンは力を込める。 どれほど痛くとも。 「帰らなきゃ………帰りたい………帰りたい………」 ◇ 「どうしたの?」 フェイトが覗き込むティアナの顔は赤い。 それは炎のせいだけではなかった。 火照りを冷ますように、ティアナは両手を己の頬に当てる。 「な、何でもありません!!!」 「そ、そう?」 あまりの勢いにフェイトは後ずさる。 耳だけではなく首筋まで真っ赤にしておいて何でも無いわけは無いのだが、それを言うにはフェイトは勇気が足りなかった。 「そ、そういえば、ヴィヴィオの準備の方はどうなんですか?」 「ああ、二周年記念パーティーの?うふふふ、ヴィヴィオってばプレゼントまで用意してるよ」 娘の愛らしさを自慢する親馬鹿のように、相好を崩すフェイトを見て、つられるようにティアナも頬を緩める。 ヴィヴィオの健気さが目に浮かぶようだった。 それだけではない。 ヴィヴィオを溺愛するシンのデレデレになるであろう姿を想像したら自ずと頬が緩んだ。 『俺さ、かなりお前の事好きかも』 電話口でのシンの言葉が甦る。 また冷ました頬が熱を帯び始める。 「ばぁーーか…………とっくの昔から私はそうだったわよ」 口にすると、妙な温かさが胸に広がる。 シンが帰ってきたら言ってやろうか。 その時シンはどんな顔をするのか。 それを思ってティアナは一人はにかむように笑った。 シン編:グッドエンド『おかえり』 一覧へ
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「――――ん」 ぐったりとしたまま眠っていたが、やがてしょぼしょぼと目をこすり、妹紅は自分が誰かに背負われていることに気付く。 「ああ、起きたか?」 「シン? え……っと、あれ?」 周りを見渡せば迷いの竹林。目が覚めたばかりで少しばかり記憶が混乱しているのか首を傾げることしばし。 「姫さんとまた大喧嘩、終わったから帰るとこ。思い出したか?」 「………あー。そうだったような、違ったような」 「そうだっての、まったく」 妹紅を背負ったまま器用に肩をすくめながらも歩みを止めないシン。その背に揺られながら妹紅は気を失う前に起こったことをつらつらと思いだす。 いつもの如くの輝夜との大喧嘩、自分のパゼストバイフェニックスと輝夜のエイジャの赤石がぶつかりあう間に割って入ったシン、そして……そして? 「あれ」 「ん?」 「いや、お前が酷い目に合うのなら分かるよ、分かるんだけどさ。なんで私が気絶するわけよ?」 間。シンの視線が泳ぎ、妙な明るさで返される。 「はぁっはっは。いやさいやさ、まずは俺に謝ろうぜ?」 「やだ自業自得じゃん? つーか質問に答えようぜお客さん。なーんで私気絶してたのかなー」 にんまりと笑いながら顎をシンの頭にぐりぐりと強く押し付ける。シンのちょやめ痛い痛いという呟きは聞こえないったら聞こえない。 やがて堪忍したのか、頬をポリポリとかきながら途切れ途切れにシンが話し出す。 「いや、さあ。流石に俺も妹紅と姫さんのが全部当たると死んじゃうわけだな」 「ふんふん?」 「だから、その……まあうん、その、なんだ。姫さんよりお前の方が強力そうだったからさ」 「だったから?」 「その………お前に発勁打ちこんじゃって」 「…………ほっ、ほう」 「いや、その……悪いとは思ってます、はい」 本当に申し訳ないと思っているのだろう、それは身体を小さく縮こまらせるシンを見れば明らか。 別に妹紅は気にしてはいない、というより自分の身を守るためなら当然のことだとも思っている。 ま、だからと言ってからかわないなんて選択肢はないのだが。 「ふ~ん? シン君は女の子に発勁なんて叩きこんじゃうんだぁ、へぇーへぇー」 「いや、ちょ、おま……いや、悪いとは思ってるんだ、その、えーと……その、ゴメンナサイ」 「あーあーあー、痛いなー痛いなーシンに発勁打たれたところがいーたーいーなー」 「お前それ明らかにウソだろ!?」 「いーたーいーなー」 「………ま、まあ俺のせいなのは確かだしな。だからこうしてお前を背負ってるんだヨ?」 「ならばよし!」 満足げに笑う妹紅にシンは疲れたように肩を落とす。無論妹紅が落ちないように気を配ることも忘れない。 しばらくヘタレるシンを見て楽しそうにしていた妹紅だが、やがて何かに思い当たったのか唇を尖らせて。 「な、シン。もしかしてだけど……私を背負ってるのって、あのバ輝夜に言われたからか?」 普段のシンの朴念仁ぶりからすれば十分にあり得る。そう思い聞いたのだが、帰ってきた言葉は意外な言葉。 「まさかだろ。俺が悪いのは事実だしさ、姫さんから言われなくったってこうしてたさ」 「…………ふぅ~ん」 いや、訂正しよう。意外でも何でもない言葉だ、シンが困っている誰かに手を差しのばさないわけがなかった。 そういう奴だということを初めて会った時から今に至るまで思い知らされているのだから。 シンが前を向いていて良かったと思う。こんなふうに頬が緩んだだらしない顔はちょっと見られたくない。 そんな妹紅を知ってか知らずか、シンはぽつりと言葉を漏らす。 「まあ………」 「ん?」 「んにゃ、何でもね」 「ふぅん………」 何を言いかけたのか気にはなる、気にはなるがあまり詮索をしすぎるのもどうかと思い適当な言葉でお茶を濁す。 妙な間が開き、何とも言えない空気に。先にその空気に耐えられなったのは妹紅。 「つーかさ」 「んー?」 「割って入ったりする癖に、お前喧嘩止めろとか言わないね」 「あー。まあなんてーの、喧嘩するほど仲がいいって言うし?」 「よくねーし、悪いしー」 ドスドスと顎をシンの頭に突き刺す。だから痛いってとぶーたれるシンに構わずによくないしよくないしと繰り返しながらドスドスと。 「だから、ちょ、一旦顎やめい! だから喧嘩を止める気はないよ。でも怪我してほしくないから割って入るけど」 「別に私らは死んだりしないよ?」 こいつらしい言葉だと、くすりと笑って妹紅はもう一度シンの頭をぐりぐりと顎で押す。 「だからやめい。ん、それは分かってる。分かってるけどさ、それでも割って入るんだろうな、人間そういうもんじゃないか?」 「ふうん? まあわかったけど、一つ訂正」 「?」 「割って入るのはお前が馬鹿だからじゃない?」 「あーあー聞こえなーい聞こえなーい」 ふざけ合いながらもシンは歩みを止めることなく、ひとまず竹林の出口を目指す。どうあれお互い疲れているのは事実なのだ。 それからは二人とも言葉もなくただシンの草を踏みつけながら歩く音だけが竹林に響く。 だけど、妹紅にとっては音はそれだけではなくて。 シンの吐息と自分の吐息、そしてとくん、とくんと耳元で聞こえる自分の心音。 (……あー、だめだわこりゃ。ホント私、こいつにイカレちゃってるね) シンの身体の熱が伝わるだけで心が満たされて、同時に足りなくなっていくのが分かる。 これで十分という気持ちともっと熱を感じたいという二つの気持ち。長い人生の中でもあまり感じたことのない不思議で辛くて、それでいて甘ったるいこの感覚。 たまらなくなってシンの背にぺったりと顔を付ける。自分の方を向いてどうしたと目で聞いてくるシンにだるい、とだけ答える。 その言葉だけで納得したのか、顔を前に戻して再び歩くことに集中し出す。自分の気持ちが声にこもってなければいいのだけれど。 「………っふふ」 突如、シンが微かに笑う。ひょっとして、気付かれた? そう一瞬思いかけたが。 「ちょっと、妹紅。手に髪当たるんだけど、くすぐったい」 まあ、これで気付くんなら自分以下色々がヤキモキすることもないわけで。何も言わずに長い白髪を手に当たらないようにどかしてやる。 代わりに、色んなやるせなさを込めて髪でシンの首筋をくすぐってやったが。 「………投げ捨てるぞ、お前」 「わり。もうやんないよ、多分」 「多分ってなんだよ多分ってさ………」 呆れたような声を上げるシンにくすくすと笑ってしまう妹紅、もう一度シンの背に顔を寄せる。 ふと、シンの首筋に火傷の痕が見える。恐らくは先刻自分と輝夜の戦いに割って入った時の物なのだろう。 (痛いだろうに。死んじゃったら、私とかと違って終わるんだよお前は?) シンだってそれは分かっているのだろうに、だのにこうやって誰かのために頑張っている。手を差しのばしている。背中を貸している。 自分がシンに惹かれているのはこの閃光のような命の輝き、人間の善性を固めたようなところなのか。 (ま、それは違うんだろうけど、ね) 惹かれている理由は究極的にはないのだと妹紅は思う。シンだから。あえて理由を述べるとしたならそれがたった一つの譲れない理由。 ―――本当に、どうしようもないくらいに自分はこの男にイカレている。 だから、なのかもしれない。今こうして、舌を伸ばして首筋の火傷を舐めようとしているのは。 そろりそろりと音もなく舌を伸ばしてどんどんと火傷に近づいて。 ぴちゃり、と言う音が意外なほど大きく聞こえて。 「ぅ、わっ!? え、ちょ……妹紅?」 「ぁ………あ、ああ! 悪い、今度はホントに事故だ!」 「ん、まあお前の様子見る限りじゃそう見たいだけどな……びっくりするだろ」 「あ、ああ、うん、そう……うん」 我に返ると顔が真っ赤に火照ってしまっているのが自分でもわかる、きっと今鏡を見たら自分で引いてしまうぐらい顔が赤くなっていることだろう。 (あーーーーーーーーー、バカ、バカ……バカ、私のバカ! ないよ! 首筋、ってかどこでも火傷舐めるとか……ないって、ないだろバカ、バカ! 引かれる! これ絶対誤魔化しきれてないって、シン引いてるって! だ、大体、もうちょっと、こう、マシな流れでさあ……こんな、雰囲気もへったくれもないっていうか………あーーーーもう、バカ、バカ……バカ、私のバカ! ないって!) ぐるぐると思考がループしていることにも、この程度ではまず自分の思いには気付かないであろうシンの朴念仁ぶりにも気付くことなく自分を罵倒してしまう。 そんな妹紅の考えに気付くこともなくシンは妹紅に何か話しかけようとするが、結局なにも思いつかなかったのか口を閉じ、再び歩きだした。 結局あれから大した言葉もなく竹林の出口までついてしまう。ぴょんと元気よくシンの背から降りた妹紅はがしがしと頭をかき。 「……ん、もうここでいいよ、後は一人で大丈夫だから」 「ん、そか………ホントに」 「大丈夫だって。というかお前よりはタフなつもりだしね」 「心配ぐらいさせろって?」 「知らんねえ?」 互いに息をつく。どちらも黙っているが、決して不快ではないこの静けさ。 「んじゃあ………また明日」 「ん、また明日。おやすみっ」 「おー、おやすみー。気ぃつけてなー」 後ろ向きに軽く手を振りながら迷いの竹林を後にする。 帰り道、妹紅が考えるのはシンの背負われたこと。 (やー、やっぱないな、うん。火傷舐めるとかホントない) 本当に自分を罵倒したくなってしまう。何考えてたと自分でも思う。 思う、のだが。 「―――――へへぇ」 顔がにやけるのは、また別なのだけれど。 おまけ 永琳「そこでちゅーよっ、抉りこむようにちゅーよ!」 慧音「待つんだ八意、それはまだ早い。それよりも壁バーンのほうがだな!」 鈴仙「あのー師匠、盗聴と盗撮って思いっきり犯罪だと思うんですけど」 永琳「ちょっと黙りなさい、今いいとこ………って、何でそのまま帰すのよぅ!?」 慧音「むぅ、いい人物ではあるのだが……ここ一番で押しが無いな、足りないではなくて無い」 永琳「なんでそこで抉りこむようにちゅーしないのよぅ……あ、そうだ鈴仙、今妹紅に嫉妬したりしてない?」 鈴仙「けしかけようとしないでください!? ま、まあ嫉妬は無いですね。な、なんて言うか? シンとは、たっくさん愛し合った仲ですし?」 永琳「……………………………………え、エエ、ソウネ!」 慧音「おい、スルーしようとするな、お前の弟子の愛はスプラッタだぞ」 永琳「や。ああなった鈴仙怖いもん」 慧音「もんって………いや、もんって」 キラ「クックックーン、さあ面白くなってきたよ☆」 輝夜「一体いつ仕掛けたの、あの盗聴器と隠しカメラ………というか、何が狙いなのよ」 キラ「やだなー僕はシンの幸せを願ってるだけだよグゲゲゲゲゲゲゲ」 輝夜「わあ嘘くさい」 キラ「ふっ」 輝夜「ということにしておくわ」 キラ「!?」 輝夜「グヤグヤグヤグヤグヤ」 キラ「くっ、キ、キラキラキラキラキラキラキラ」 輝夜「グヤグヤグヤグヤグヤグヤグヤグヤ」 てゐ「いや、なんていうか。青いねー、若いってのはいいことだよ、うん。あの坊やが一番青臭いけどさ」 おまけ2 湯船に口をつけ、ぶくぶくと息をふきだす。思い返すのは先ほど妹紅を背負ったこと。 いや、正確には。妹紅を背負ったときに感じた体温と肌の柔らかさ、そして首筋に感じた熱い感覚。 「いや、ないから。あいつは胸ないから」 だけど背中に感じたふにゃりとしたあの感触は。 「んああああ゛あ゛あ゛ー! あいつにそういうつもりがあるわけないってのに、馬鹿かよ俺は!」 ばしゃばしゃと熱いお湯で顔を洗い煩悩を振り払おうとするが、妹紅の柑橘系のような匂いは頭から離れなくて、その匂いが背中の熱を、感触を思い起こして。 「だか、だから、ないって! ないから! ないから、だから『おさまれ』よ!!」 頭をガシガシと強くかきながら呻き。 どうにか色々納めようとし。 「それもこれも……全部あの姫さんのせいだ、うんそうだそうに違いないそうだと決めた」 ―――妹紅、押し倒しちゃってもいいのよ? シンが妹紅を背負ったときに、輝夜からかけられた言葉だ。 その時はタチの悪い冗談だと思って流したのだが、背中に背負った妹紅の体温に気付いた時、うっかり鮮明に思い出してしまい。 後は泥沼、妹紅が自分の煩悩に気付いてなければ奇跡か何かじゃないかと思う。というか隠し通せたかどうか自信が無い。 もうぶっちゃけアリスには完璧に振られたのだから別にいいんじゃね? なんてことは思っていない、はずである。 思ってないよね? うん思ってない思ってない。そんなあからさまな嘘を心に付きながら後は思考の堂々めぐり、無限ループへと突入するだけだったのだが。 ごんがごんがと壁に頭を打ち付ける姿は非常にアレなこと極まりなし。 「ないってーないってーマジでないってーだから無いって言ってるんだよ!!」 「うっさいのよ風呂場で騒ぐな!」 結局、アリスに頭を爆発され、気絶して湯あたりするまで呻き声は止まらかった。
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1 スバル「春だねー」 シン「ああ、暖かいよな」 ビュゥゥゥ←春一番の悪戯な風 シン「っ!!」 スバル「!!・・・見た?」←スカートを抑えた シン「い、いや、その」 スバル「顔が赤いよ!シンのエッチ!!」 バチーン ヴィヴィオ「あったかいねー」 ヴィータ「ああ、春だぜ」 2 クリスマス ヴィヴィオ「今年もサンタさん来てくれるかな?」 ヴィータ「もちろんだろ!今年も良いこしてたからな!ヴィヴィオは」 スバル「はーい、きっとサンタさんきてくれるから。明日を楽しみにゆっくり寝なさい(ちゅ)」 シン「よしっと」 スバル「大丈夫だった」 シン「ああ、もちろんさ」 スバル「それじゃあ、今度は私からシンへクリスマスプレゼントだね(ぎゅうっ)」 シン「ん?やっぱりクリスマスプレゼントは?」 スバル「う、うん………あ、『あたし』」 シン「いつももらってる気がするんだけどなぁ」 スバル「そ、そんなぁ…」 シン「ははっ、嘘だって。だったら俺もスバルにクリスマスプレゼントやらなきゃなぁ?」 スバル「きゃぁっ、ん…シン………」 シン「スバル………」 3 娘’S「ハッピーバレンタイーン」 シン「おお、二人とも。チョコか?」 ヴィータ「おう、手作りチョコだ」 ヴィヴィオ「お姉ちゃんと一緒に作ったんだよ~」 シン「はは、ありがとう。あとでおいしくいただくよ」 ヴィヴィオ「作ってる最中お姉ちゃんってば、『はぁ~ほかに渡す相手がみつめないとないなぁ~』 って愚痴ってたりしてたんだよ」 ヴィータ「ヴィヴィオ!おまっ」 シン「ん~?まだそういうのはいいぞ~ヴィータ」 スバル「はいはい、ご飯の支度できたからお夕飯にしましょう」 それからして シン「………」 スバル「ん?なに?」 シン「い、いやなにも」 娘’s「おやすみなさーい」 シン「ああ、おやすみ」 スバル「じゃあ、私たちも寝ましょうか」 スバル「あなた~(ごろごろすりすり)」 シン「ん…」 スバル「んふっ、ふむぅ…」 シン「っは、あれ?(去年みたく唇にチョコじゃない?もしかして今年はチョコなし!?)」 スバル「あれれ?もしかして去年みたく口紅チョコだと思ってた?」 シン「ば、馬鹿。そんなわけ」 スバル「今年はね~、体の『どこかに』チョコを塗ってあるの」 シン「!」 スバル「ねぇ、どうする?」 シン「いただきます!」 スバル「きゃ~♪」 4 シン「よし、できたっと」 ヴィヴィオ「うわー、サクサクで美味しい」 ヴィータ「パパってばお菓子も作れるんだな」 シン「今日はホワイトデーだからな」 夜 スバル「シーンー、ホワイトデーは三倍返しー」 シン「わかってるよ。残りの分は…」 スバル「ん…きゃぁ」 シン「明日…休みだしな」 スバル「もう…バカァ(笑)」 5 スバル「(あ、今日4月1日か…。そうだ)」 (職場) スバル「あ、シンいいところに」 シン「ん?どうしたスバル」 スバル「昨日いいそびれちゃったけど私ね実…っっ!!」(なんか一気に顔色変えて立ち去る) シン「ん?おい、スバル。どうしたんだ、おい!いっちまったなんなんだ…」 (女子トイレ) スバル「うぇぇぇっ………、こ、これってまさか…本当に…」 (職場) シン「え?急に体調壊して早退したですって!?」 シャマル「ええ、ちょっと顔色悪そうでしたから」 ヴィータ「おいおい、心配だな。大丈夫か?マ…スバルは?」 (帰宅後) スバル「えーっと、その、今日はごめんね心配かけちゃって。あと…これ」(と言いつつ母子手帳を見せる) シン「え!?そ、それって!?」 スバル「うん、2カ月…だって///」 シン「や…やったーーー!やったな、スバル!」 ヴィヴィオ「え?何、どうしたの?」 ヴィータ「何…私らがお姉ちゃんになるって話をしてたのさ」(少し涙ぐみながら) 6 昼時 スバル「いただきまーす」 ティアナ「うわぁ、いつ見てもすごい量…ってゆうか増えてない?動いてないのに」 スバル「事務作業って頭使う事が多くて」 ティアナ「それに、つわりとかひどくないの?」 スバル「うーん、体質によるみたい。私は平気だったけどお義母さんとか大変だったって」 ティアナ「へー、そういえばあんた今後どうするの?この仕事残るの?それとも専業になるの?」 スバル「あー、うん。これからの事考えると専業になった方がいいかなって、今はそんな感じかな」 業務終わり、帰宅して シン「………」 スバル「どうしたの?そんな難しい顔して」 シン「いや、この子(スバルのお腹を撫でて)が産まれたら。スバルが少なくても仕事 休むことになるから、頑張らなくちゃって」 スバル「もう、そんな事。いまさらじゃない、もう頑張ってくれてるんだから。 それと…」 シン「うん?」 スバル「そ、その…、管理局辞めてもバリアジャケットの格好くらいはできるから…///」 シン「お、おぅ///」 一方、子供部屋 ヴィヴィオ「ジュースがさらに甘ったるくなってるね」 ヴィータ「一階はストロベリータイムか…、おやつとりにいけねぇなぁ」←ヴィヴィオの勉強を見てる
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カツーン カツーン カツーン ウーノ「ふう」 その夜、ウーノはシンの体に以上がないか心配になり、部屋を訪れようとしていた。 シン「ごめ・・・い・・・・ご・・・・・」 部屋からうめき声が聞こえる。 ウーノは慌てて部屋の扉を開け、明かりもつけずにシンの前にかけよった。 シンは眠っていた。 ものすごい量の汗をかき、涙を流し何かをつぶやきながら・・・・ ウーノは聞き耳をたてた。 シン「・・なさい・・・・ごめんなさい・・・」 ウーノは心配になり、シンの額に手をやった。すると・・・・ シン「母・・さん?」 ウーノは混乱した。自分を夢の中で亡くなった母親と勘違いしていることに・・・ しばらく沈黙し考え、穏やかな口調で聞いた。 ウーノ「シン・・・・何を謝っているの?」 まるで泣き止まない童をあやす母親のように・・・・ シン「・・ごめんなさいっ、僕だけ・助かって、母さん・・父さん・・・・マユを守れなくって、 それに、あの後も戦うことしかできなくって・・・・誰も守れなかった・・。」 ウーノは驚いた。まだシンの『悪夢』は終わっていなかったことに・・・・ いまだに夢の中まで亡くなった家族に懺悔し続けていることに・・・・ ウーノ「シン・・・・確かにあなたには守れなかった人たちはいたのかもしれない。 でも、母さんも父さんもマユも決してあなたを恨んでなんかいない。 それにね・・・シンは戦うことで沢山の人たちを守ってきたわ。 ただ、いつも走り続けていたから、その人たちの笑顔に気付けなかっただけ・・・・。」 シン「・・・・許して・・くれるの・・?」 ウーノ「ええ、だけど明日からは辛いときは‘辛い’ってまわりの人に言えるって約束できる? あなたのまわりには一緒に泣いてくれたり、受けとめてくれる人が沢山いるんだから・ね。」 シン「うんっ、約束する」 ウーノ「ゆびきり げんまん♪」 ウーノ・シン「「うそついたら はりせんぼん のーますっ ゆびきった♪」」 ウーノ「もう晩いから・・おやすみなさい。シン」 シン「おやすみ・・・母さん・・」zzz そして、ウーノは部屋を出ていった。 自分の行動が正しかったのか、なぜやったのかさえ分からぬまま・・・・ それから、シンは決して忘れたわけではないが『あの夢』を見なり、元の体に戻った。 そして、ほんのちょっぴり人を頼るようになった。 ただ・・・ シン「母s・ウ-ノさん、あのお話なんですが」/// ノ―ヴェ「シン・・また言ったね」ニヤニヤ チンク「さあ、甘えたいのなら。この姉の胸で甘えろ!シン兄ィ!」ダキッ シン「な・・なんだよっ・・・まったく」/// ウーノ「うふふっ、もう」 シンはウーノを‘母さん’と呼んでしまうことが多々あり、自分に困惑した。 その度にウーノは少し困りながらも微笑みで返した。 ただその微笑は聖母のようであったとか・・・・・ -03へ戻る 一覧へ
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早朝、ジェイル・スカリエッティの研究所 ピピピッ ピピ カチャ シン「ん~もう朝かぁ、ん・・・・!!??」 シンは気づいた。いつもと何かが決定的に違うことに・・・ バン! シン「ドクター!!」 スカ「ん・・・どうした、こんn(ゲシッ!)ブゲェ」 眠そうなスカリエッティにシンは思いっきり蹴りこんだ。 シン「アンタ、一体僕に・・じゃない、俺に何をしたぁ!?」 そこには、ブカブカのパジャマを着て、ズボンがずれ落ちないように小さな両手でギュッと握り締めている赤い瞳の5才児がいた。 ダダダッ ぞくぞくと集まるナンバーズ トーレ「どうした!」 ウーノ「何があったんですか?」 シン「うわあぁーんウーノさん、ドクターがぁ・・ドクターがぁ・・・」 今のシンは実際見た目も子供だが、子供のようにウーノに泣きついてしまった。 ウーノ「?!・・もう恐くないですからね。ドクター、この子は?」 ニヤリ スカ「シンだよ」 チンク「この子供が・・・・シン兄ぃ?!」 シン「グスっ・・・・うん」 シンは顔を上げた。その顔は涙目になり、白い頬をほんのり赤くし女の子と見間違う可愛さをもっていた。 ズキューーーン ディエチ「これは」 セッテ「なかなか」 セイン「グッと」 ウェンディ「くるッスね」 トーレ・チンク・ノーヴェ「「「よし!私(姉)の弟になれ!」」」 -02へ進む 一覧へ